A「親が亡くなって、住んでいた家を売却しようか悩んでいる・・・」
B「親に家の売却を頼まれた・・・」
など、さまざまな理由で親の家を売却しなければならないときがあるでしょう。
先に申し上げると、上記のAとBでは家の売却方法に違いがあります。
親が亡くなっている場合と、親から直接家の売却を頼まれた場合では手順が異なるのです。
査定之助は日々、”家を売りたい方”とそれを叶える”不動産会社”を繋げる役割を担っており、中立的な立場から家を売るときのお役立ち情報を当ブログで発信しています。
今回は、状況に応じて異なる親の家を売る方法についてわかりやすく解説します。
親の家を売る方法
売りたい家が、登記簿上親の名義になっている場合は、通常の家を売る手順とは異なります。
また、親が亡くなった後かそうでないかでも行う手続きが異なりますので、それぞれのケースで手順を見ていきましょう。
1.相続した親の家を売る場合
相続とは、被相続人(親)が亡くなって、相続人(子)に残された財産・遺産を引き継ぐこと。
相続した家を売るときは大まかに『相続登記』『売却』という2つの手順が必要になります。
簡単に説明すると、親といえど人の家を勝手に売ることはできないので、名義変更をするための手順が必要になります。
不動産は、誰の持ち主であるかという所在を『登記簿』に記録してあり、相続した不動産を売却するにはその登記簿に記載してある所有者を変更する必要があるのです。
【相続登記の流れ】
①遺言書の有無を確認
・遺言書があれば家庭裁判所の検認などを受け、遺言書に従った方法をとる
②相続人を確定
・複数人で遺産の分割をする場合は協議を行う
・一人で相続した場合はそのまま相続登記を行う
③親の家の名義変更(相続登記)
・必要書類を揃え司法書士に依頼
(自分で法務局へ申請することも可能ですが手続きは煩雑)
【相続登記に必要な書類】
相続登記を行うには、以下のような書類が必要になります。司法書士に申請を依頼すると書類作成だけではなく、印鑑証明書以外は代理で取得してもらえるので手続きが楽になるでしょう。
- 登記申請書
- 被相続人の戸籍謄本(出生〜死亡まですべて)・住民票
- 相続人の戸籍謄本・住民票
- 固定資産評価証明書
- 遺産分割協議書・各相続人の印鑑証明書(必要な場合のみ)
【相続登記にかかる費用】
司法書士へ相続登記を依頼する場合、5〜10万円ほどの費用がかかります。
また、登記の手続きにかかる登録免許税(家の評価額×0.4%)も必要です。
【相続税】
親から引き継いだ家、遺産には相続税がかかります。
相続税の額は遺産がいくらあるのかで決まり、相続人が計算して申告・納付を行います。
相続税申告の期限は、被相続人(親)が亡くなった日の翌日から10ヶ月となっているので要注意。
とはいえ、相続税には「3000万円+600万円×法定相続人の数」という基礎控除があります。
控除額は相続人が増えるほど多くなる仕組みで、この基礎控除額以下なら相続税はかかりません。
上記の基礎控除額を超えた場合、以下の表に準じて相続税がかかります。
ちなみに、この基礎控除の額は平成27年に行われた相続税の改正により、大きく引き下げられたため以前より多くの方が相続税の課税対象となりました。
相続税の速算表を載せておきますので、ご参考にどうぞ。
取得金額 | 税率 | 控除額 |
1000万円以下 | 10% | ー |
1000万円超3000万円以下 | 15% | 50万円 |
3000万円超5000万円以下 | 20% | 200万円 |
5000万円超1億円以下 | 30% | 700万円 |
1億円超2億円以下 | 40% | 1700万円 |
2億円超3億円以下 | 45% | 2700万円 |
3億円超6億円以下 | 50% | 4200万円 |
6億円超 | 55% | 7200万円 |
【相続税の計算方法】
相続税の計算方法は以下の通りです。相続人が複数人いる場合は複雑な計算となりますが、後述する計算例に当てはめてみると概算がわかります。
- 課税遺産総額を計算する
- 法定相続分で分ける
- 相続税の総額を計算する
- 各相続人が収める税額を計算する
※法定相続分についてはこちら⇨国税庁|相続人の範囲と法定相続分
相続人が複数人いる場合の計算は、国税庁のホームページに記載されている計算例がわかりやすいので、こちらを参考に計算してみると良いでしょう。
①課税遺産総額を法定相続分どおりに分配、それぞれに税率を適用し税額を計算します。
②それぞれの税額を足した金額が相続税の総額となります。
③相続税の総額を、実際に取得した遺産額に応じてあん分(割り振る)
④あん分した金額から、配偶者の税額軽減など各種の控除を差し引いて、実際に納める税額を計算します。
【売却】
親から相続した家を売る流れは、『相続登記』を済ませた後、通常の家の売却と同じ流れになります。
家を売る流れについてはこちらの記事で詳しく解説していますので、こちらをお読みください。
関連記事⇨家を売る時に覚えておきたい基礎知識|流れ・税金や手数料について解説
関連記事⇨【マイホーム売却】自宅を売るための完全マニュアル
相続した家を売る場合、通常よりも手続きが多いためできるだけ早く行動することをおすすめします。
また、家の売却は専門的な知識が必要ですので一人で悩まずに、早めに不動産会社に相談しましょう。
2.親の代理で家を売る場合
親が健在で、引っ越しなどのために家の売却をお願いされた場合は、代理人となって家を売ることが可能です。
この場合は、家の売却を代理で行うための『委任状』を作成して『売却』の流れになります。
まずは、不動産会社へ査定依頼をしてから売却の委任状を作成するとスムーズに家を売ることができます。
関連記事⇨【家の売却】失敗しない為に見積もりは必ず複数社に取るべき理由
【委任状の作成】
委任状は決まった書式に記載するのではなく、必要事項を確認しながらご自身で作成することが一般的です。
もしくは不動産会社がフォーマットを用意してくれる場合もあるので、売却を依頼する不動産会社に一度尋ねてみるのも良いでしょう。
【委任状に記載する内容】
委任状には以下のような内容を記載し、売却を依頼する不動産会社に提出します。
- 代理人の住所氏名
- 不動産売買契約締結を代理人に委任する主張
- 売買物件の表示項目
- 委任の範囲
- 委任状の有効期限
- 委任状の日付
- 委任者の住所・氏名
- 代理人の住所・氏名
【売却】
親に依頼されて家を売る場合は、委任状を用意することで、通常の売却と同じ流れで売却できます。
家を売る流れ、税金や手数料についてはこちらで詳しく解説していますので、ご参考にどうぞ。
関連記事⇨家を売る時に覚えておきたい基礎知識|流れ・税金や手数料について解説
関連記事⇨知らないと損!家を売る時にかかる費用や手数料について徹底解説
委任状を用意しても売却ができない場合
親が認知症などで、意思表示をすることが困難な場合は、委任状を作っても法的に認められません。
その場合は、成年後見制度を利用して家を売ることが可能です。
【成年後見制度】
成年後見制度とは、「判断力が不十分」で契約等の法律行為が行えない方のために、後見人等が代理で契約締結をしたり財産を管理したりすることで本人の保護を図る制度です。
この制度を利用することで、後見人は不動産の売却などを行うことができますが、必ずしも子供が成年後見人に選ばれるとは限りません。
必要な書類を準備し、面接や申し立てを行ったうえで家庭裁判所の審査が行われ、成年後見人が選ばれます。
成年後見人制度を利用したいときは、家庭裁判所・市区町村の高齢者福祉課等・社会福祉協議会・地域包括支援センター・青年後見を業務とするNPO等に相談しましょう。
親の家を売るときの税金の特例や控除
通常、家を売却して利益を得ると税金がかかりますが、親の家を売る場合は、様々な特例や控除を利用し税金の負担を軽くすることができます。
ここからは、親の家を売るときに利用できる税金の特例や控除を、前述の「相続した親の家を売る場合」と「親の代理で家を売る場合」に分けていくつかご紹介します。
相続した親の家を売る場合に利用できる税金の特例や控除
相続した親の家を売る場合に利用できる税金の特例や控除を紹介します。
空き家の譲渡所得の3000万円特別控除
親が亡くなり、相続で空き家になった家を売却した場合、譲渡所得(家の売却で得た利益)から3000万円を差し引くことができる控除です。
近年、空き家が増え続けていることが社会問題となりつつあるため、空き家を売却しやすくするために設けられた特例です。
⇨国土交通省|空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)
[利用できる主な条件]
・相続日から起算して3年を経過する年の12月31日までであること
・特例の適用期限である2027年12月31日までであること
・被相続人(親)が一人で暮らしていた
・相続から売却まで空き家であった
・売却金額が1億円以下であること
・空き家が一戸建てかつ昭和56年5月31日以前に建築されたこと(マンションなどを除く)
・耐震基準を満たした建物の売却または建物を取り壊した土地を売却した場合
・買主が購入した翌年の2月15日までに耐震改修または除却の工事をした場合(2024年1月1日より適用)
・相続人の数が3人以上の場合は1人あたりの特別控除額は2,000万円とする(2024年1月1日より適用)
この特例は2023年12月31日までの特例でしたが、2023年度の税制改正によって2027年3月31日まで4年間延長されました。
細かい条件が定められていますが、国土交通省のホームページに制度の詳細や申請の流れが記載されていますので、ご自身が対象になるか確認してみると良いでしょう。
●譲渡所得の計算方法●
譲渡所得=売却金額- 取得費+譲渡費用
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、小規模な宅地を相続した場合に一定の条件を満たせば、宅地の評価額を最大80%も減額できる特例です。
相続した宅地が、事業用であるか居住用であるかによって、要件や適用できる宅地の限度面積が異なります。
詳しく知りたい方は、国税庁のホームページをご確認ください。
親が老人ホームに入所した場合でも税金の特例は利用できる
親が老人ホームに入所した場合、相続開始直前まで親が居住している条件を満たさず、空き家の譲渡所得の3000万円控除などはかつて利用できませんでした。
しかし、2019年の税制改正によって、親が亡くなる直前まで老人ホームに入っていても、条件を満たせば空き家の3000万円控除の特例や、小規模宅地等の特例が利用できるようになりました。
[利用できる主な条件]
・親が老人ホームに入所した時点で要介護認定などを受けており、相続開始直前まで老人ホームに入所していた場合
・親の家を事業用などで賃貸していない場合
一定条件を満たせば、これらの特例が利用できるため、詳しい内容は国税庁のホームページや税理士にご確認ください。
⇨国税庁|No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)
⇨国税庁|No.3307 被相続人が老人ホーム等に入所していた場合の被相続人居住用家屋
親の代理で家を売る場合に利用できる税金の特例や控除
次に、親の代理で家を売る場合に利用できる税金の特例や控除を紹介します。
マイホームを売ったときの特例
親の代理で家を売る場合、一定の条件を満たせば所有期間の長さに関係なく、譲渡所得の金額から3000万円まで控除できます。あくまで代理として親の家を売るだけで、親がマイホームを売ったことになるため、この特例が利用できます。
[利用できる主な条件]
・親が住んでいる家と土地を売ること。もしくは親が住まなくなった日から3年を経過する年の12月31日までに売ること
・家の買主が親族や同族会社など特殊な関係ではないこと
・売った年・前年・前々年に特例の適用を受けていないこと
譲渡所得が3000万円まで控除できるお得な控除なので、詳しく知りたい方は、国税庁のホームページをご確認ください。
この特例については、親が老人ホームに入居した場合でも特別な措置はありません。しかし、老人ホームに入居してから3年を経過する年の12月31日までに売れれば、利用できる条件を満たすため、特例を利用できます。
売却の結果、税金がかからないケースもありますので、家の売却を考えている方は、まずは「家がいくらで売れるのか」を知ることから始めましょう。
親の家を売るときは不動産会社選びも大切
冒頭で記載した”相続した家を売る場合“”代理で家を売る場合“どちらのケースでも、不動産会社へ家の売却を依頼することになります。
親の家を売る場合、通常とは異なる売却手順となるため、状況に合ったサポートをしてくれる不動産会社を選びましょう。
一社のみで判断せず、いくつかの不動産会社を比較してみると、不動産会社による対応や査定金額の違いが分かります。
不動産会社を比較する際は、インターネットの不動産一括査定サイトを利用すると便利です。
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まとめ
親の家を売る方法は、大きく分けて3つの方法に分類されます。
・親が亡くなって相続した家を売る場合は、『相続登記』をしてから『売却』
・親は健在だが、親の名義の家を代理で売る場合は、『委任状』を用意して『売却』
・親が認知症などで判断力が不十分な場合、『成年後見制度』を利用して『売却』
それぞれの状況に合わせて、必要な手続きが異なるため、注意しましょう。
家は空き家にしておくことで価値がどんどん下がってしまいます。
さらに、維持費がかさみ出費も増えてしまうので、早めに対策を取り、損をせずに家を売却しましょう。